「世界農業遺産」とは

GIAHS <Globally Important Agricultural Heritage Systems>

伝統的な農林水産業を営む地域の中で世界的に重要と認められる地域を、国連食糧農業機関(FAO)が認定する制度。
対象は、伝統的な農林水産業とそれを取り巻く人、文化、食、景観などの全てを含む❝農林水産業システム❞で、時代や環境の変化に適応させながら、「生きた遺産」として保全します。
世界で26ヶ国86地域、日本では15地域が登録されています。(2023年10月現在)
「にし阿波の傾斜地農耕システム」は、中四国で初めて「世界農業遺産」に認定されました。

参考:農林水産省―世界農業遺産・日本農業遺産(外部リンク)

国内の世界農業遺産認定地域


「にし阿波の傾斜地農耕システム」とは

斜めで生きる知恵

「にし阿波」と呼ばれる徳島県西部の美馬市・三好市・つるぎ町・東みよし町には、標高100~900mの山間地域に200近くの集落が点在しています。いずれも急峻な傾斜地に位置し、場所によっては斜度40度にもおよびます。斜面を利用する農業では、段々畑のように平らな面を造成することが一般的ですが、これらの地域では傾斜地のまま農耕を行なってきました。そのために、独自の技や知恵を培って、自然を守り、生命を守り、集落を守ってきたのです。この400年以上にわたり継承されてきた山村景観や食文化、そして農耕にまつわる伝統行事などの全てが「傾斜地農耕システム」です。
このシステムは、未来に向けても持続可能なものと認められ、食と農の危機的状況や生態系の破壊など世界が直面する問題解決にもつながるものと評価されました。

斜めの美

険しい山々と深い渓谷が織りなす斜面には、民家と畑が張り付くように立地し、世界でも珍しい独特のランドスケープを創り上げています。

カゲジとヒノジ

「傾斜地農耕システム」とは、傾斜地で生まれた農業の仕組みです。では、「にし阿波」の傾斜地はどのようにして誕生したのでしょうか。
「にし阿波」一帯は、巨大なプレート(岩盤)がぶつかって生じる日本最大級の断層❝中央構造線❞の上に位置しています。この線上では、ダイナミックな断層運動が起こり、隆起または変形することで山が形成されます。
南からのプレート移動により、急激に押し上げられて山岳地帯が形成され、さらに破砕帯(緑色片岩)というもろい地質であったため、北向きの斜面は地すべりが多く、傾斜は緩いが日当たりが悪い❝カゲジ❞となり、南向きの斜面は崩落により、傾斜はきついが日当たりの良い❝ヒノジ❞となりました。この地すべりや崩落の跡地に人が住みついたのが集落の起源といわれています。
破砕帯は地下水を多く含むことで地すべりを誘発し、跡地にも水が豊富に残りました。山の中腹でありながら湧き水に恵まれた「にし阿波」では、山の中腹にも集落を形成したのです。

世界が認めた5つのポイント!

世界農業遺産「にし阿波の傾斜地農耕システム」は持続可能な開発目標 (SDGs)を支援しています。