農業遺産 有機栽培のユズ

天田善信さん(美馬市木屋平)

剣山の麓にある美馬市木屋平はユズの産地として知られています。
木屋平ではじめに本格的なユズの生産に乗り出したユズ農家の天田善信さんは、養蚕の衰退してきた昭和38年に、その頃、高値がついていたユズに着目し栽培を始めました。

美馬市木屋平森遠地区

天田さんの有機ゆず

はじめは木屋平でユズの栽培は向いていないと言われましたが、栽培はうまくいき木屋平にユズの生産が広がりました。
昭和50年代半ばにはユズの価格が、12個入り1箱で6,000円から7,000円の高値で売られたこともありました。
しかし、昭和60年代に入り価格は下がり安い時で1kgが60円ほどになっていました。

(ユズを収穫する天田さん)

天田さんは、ユズの実が付き始める春から夏にかけて行う消毒で農家の人が体を壊す人がいたために無農薬での栽培を考え、また付加価値もついてブランド化に繋がるのではと考えました。
ちょうどその頃に農協から有機栽培を勧められ、平成11年に徳島県の有機認定第1号になり、畑の肥料には鶏糞や乾燥したカヤを入れ、無農薬で栽培を始めました。
その後、木屋平の他のユズ農家も有機認定を受け地域全体で有機栽培に取り組むようになりました。
最近では海外でもユズが注目され、有機栽培で作られている天田さんのユズの視察にフランス人の料理人が来ることもあるということです。

収穫を手伝うお孫さん

毎年11月の収穫時期には、市外に住むお孫さんが収穫の手伝いに来てくれるのを楽しみにしています。
また、山間部の農業を都市部の学生にも知ってもらおうと収穫体験も行っています。
山の斜面でユズの重い箱を運ぶのは若い人でも大変ですが、天田さんは「からだの続く限り作りユズを続けたい」と話していました。