農業遺産 傾斜地農業の文化を後世に伝える
西岡田治豈さん・節子さん(つるぎ町)
にし阿波の傾斜地農法の象徴的な場所といえば、つるぎ町貞光猿飼にある西岡田さんの畑です。夏にはインゲン、秋にはソバを育てていて急な斜面の下に望む渓谷やまわりの山の美しさで観光農園としても人気です。
西岡田さん夫妻は、農作物を育てる意外にも大切にしている地域の農業文化があります。
それが伝統行事の「お亥の子さん」です。
お亥の子さんは旧暦の10月はじめの亥の日に行われる五穀豊穣や家内安全を祈る伝統行事で、昔からこの地域では子どもたちが参加する習わしがあります。今は地域に子どもたちがいないために、貞光小学校の子どもたちが猿飼集落を訪れて行事を受け継いでいます。
子どもたちは、「イイチンタラ」という里芋のズキを芯に入れまわりを縄で巻いた棒を家の軒先で叩いたり、樫の木の丸太のまわりについたカズラを引っ張り、丸太を持ち上げて地面に叩きつける「立てずき」というものを「いのこうた」と一緒に行ったりします。昔は、子どもたちが家々をまわってこれを行い、お礼にお菓子をもらっていたそうです。
(イイチンタラと立てずきをする児童)
西岡田さんは、この行事で子どもたちにソバ米の入ったバラ寿司を振る舞い、郷土の味を知ってもらう機会にしています。西岡田さんが急傾斜の畑で丹精込めて育てたソバ米のバラ寿司を子どもたちは味わっていました。
農業にまつわる色々な文化が数多く残るにし阿波。西岡田さんから次の世代に地域の伝統行事が受け継がれています。